2018年5月27日〜29日/飯出敏夫
温泉達人による、九州湯めぐりレポートです!
実は、湯めぐりをした5月28日は温泉達人71歳の誕生日。
昨年、日本百名山登山中、南アルプスの北沢峠で知り合った方にも再会し、
その方の計らいで素敵な湯めぐりをさせていただき、最高の誕生日プレゼントになったようです。
ぜひ、ご覧ください♨︎
(写真上:大分県「赤川温泉」の露天風呂にて)
駆け足でめぐった九州・極上湯の旅
5月27~28日、日本温泉地域学会の春の大会が熊本県黒川温泉を会場に開催された。
この大会の参加に合わせてめぐった九州・極上の湯旅の報告。
5月27日早朝、前夜発の大阪南港からのフェリーで別府観光港に上陸した私を、先乗りしていた湯友が確保したレンタカーとともに迎えてくれた。
総勢6名のにぎやかな旅である。
この日は別府から、いくつか湯めぐりしながら会場の黒川温泉に向かおうという寸法である。
夕方からの懇親会に間に合えばいいので、時間はたっぷりある。
■5月27日
個性的な4湯 由布院温泉→筌ノ口温泉→赤川温泉→黒川温泉
1湯目。
まずは、由布院温泉「束ノ間」(旧庄屋の館) へ。
リニューアルして改称したこの宿の湯は、知る人ぞ知る美しい「ホワイトブルー」の湯。
「ミルキーブルー」と評した人もいた。
看板風呂の大きな露天風呂が立ち寄り入浴に対応してくれる。
以前の岩風呂の趣と比べるとすっきりとお洒落な造りに改装されていたが、そのぶん野趣は失われた印象を受けた。
それでも、鮮やかなブルーの湯は健在。
由布岳の双耳峰を仰ぎ見ながらの入浴は素晴らしかった。
(泉質/アルカリ性のナトリウム-塩化物泉、97.4℃)
▲由布院温泉「束ノ間」の露天風呂
2湯目は「やまなみハイウェイ」から少し逸れた筌ノ口温泉にある日帰り施設「山里の湯」。
簡素な湯屋で、浴槽は男女別の小ぶりな内湯があるだけだが、ここの含二酸化炭素泉 (通称炭酸泉) の泉質が温泉ファンをうならせる。
いかにも効能のありそうな泉質である。
(泉質/含二酸化炭素-ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉、38.3℃)
▲筌ノ口温泉「山里の湯」の浴槽
3湯目は、久住山の登山口に湧く赤川温泉。
かつて泊まったことがあるが、現在は宿泊を休止し、冬期も休業。
入浴のみの営業で、それも週末の金・土・日曜と祝日しかやっていないという。
ちょっと不安だったので電話を入れてみると、日曜の今日は入浴OKということなので、勇躍駆け付ける。
ここは冷鉱泉だが、真っ白に変色し、露天風呂からは「雄飛の滝」を目前にするという絶景温泉である。
内湯の加温した湯で温まり、露天風呂の冷たい湯との交互浴。
これが初夏から夏場にはたまらない魅力である。
(泉質/含硫黄・二酸化炭素-カルシウム-硫酸塩泉、23.3℃)
▲赤川温泉の露天風呂
本日の4湯目は会場でもある黒川温泉「やまびこ旅館」。
いくつかの宿に分宿することになっていて、私たちにあてがわれたのがここ。
茅葺きの堂々たる門が迎える高級感あふれる宿で、黒川温泉では最大という露天風呂がウリである。
その評判にたがわず、露天風呂は見事だった。
黒川温泉は、例の熊本地震後に湯に変化を生じた宿も少なくなく、ここの露天の湯は透明感のあるブルーの湯だったのには驚いた。
私の記憶には、黒川温泉の湯の色は無色澄明かウーロン茶色から茶褐色を呈している、という印象しかなかったから。
「やまびこ旅館」にはほかに男女別の内湯と、空いていれば自由に入れる貸切風呂が6つもあった。
(泉質/ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉、78.8℃)
▲黒川温泉「やまびこ旅館」の大露天風呂
■5月28日
人吉温泉 昭和レトロの温泉銭湯「鶴亀公衆浴場」と「新温泉」
この日は朝から南小国町役場の大ホールを会場に、日本温泉地域学会の研究発表会が14時頃まで開かれた。
これに出席したあと、2日間をともに楽しく過ごした湯友と別れ、鹿児島から学会に参加した妙見ホテルの只野支配人のクルマに便乗させてもらい、人吉市をめざす。
人吉は九州の中でも大好きな街で何回か訪ねているが、実は昨年、日本百名山登山中、南アルプスの北沢峠で知り合った和田博さんという人吉市在住の岳人に再会するべく、この機会に足を延ばすことにしたのである。
もちろん、事前に、人吉市内に点在する5湯目の人吉温泉の昭和レトロな温泉銭湯の案内を、地元在住の和田さんにお願いしてあった。
人吉インター近くで只野さんのクルマから和田さんのクルマに乗り換え、夕食までの1時間30分ほどの間に「鶴亀公衆浴場」(泉質・泉温不明) と「新温泉」(単純温泉、泉温不明) の2ヵ所を回る。
実はこの日、「鶴亀公衆浴場」は定休日だったのだが、和田さんが特別に開けてもらう約束を取り付けておいてくれたのだ。
涙が出るほど嬉しかった。
両館とも甲乙つけがたい鄙び感だが、訪れる人が少ないぶんだけ、「鶴亀公衆浴場」のほうが上か。
▲人吉温泉「鶴亀共同浴場」
「鶴亀公衆浴場」は特別に開けてもらったので当然だが、信じられないことに「新温泉」もこの日は独泉だった。
2湯めぐって、和田さんがセッティングしてくれた馴染みの中華料理店で、和田さんの奥さん、妹さん夫妻も駆けつけてくれて大宴会。
その後は、これまた行きつけのカラオケスナックへ。
この日がちょうど私の誕生日だったこともあり、最大級のもてなしを受けた。
日付が変わる頃、タクシーで自家源泉のビジネスホテル「さ蔵」に投宿。
▲人吉温泉「新温泉」
■5月29日
人吉温泉の温泉銭湯4ヵ所と西郷どんゆかりの白鳥温泉
翌29日。
早朝に「さ蔵」の風呂(ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩・塩化物泉、49.1℃)に入浴し、和田さんが「さ蔵」まで迎えに来てくれたので、朝食前に「堤温泉」(ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉、51.3℃)へ。
ここも独泉。
▲人吉温泉「さ蔵」の露天風呂
▲人吉温泉「堤温泉」
さらに朝食を済ませてから再合流し、「願成寺温泉」(ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、44.2℃) と「元湯」(ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉、47.7℃) を訪ねた。
「願成寺温泉」は住宅街の中にあり、瓢箪形のタイル貼りの湯船が印象的。
先客は1人だけだった。
▲人吉温泉「願成寺温泉」
「元湯」は人吉城跡の城内入口付近にあるので一番人気があるようで、すでに先客が数人いた。
これで、ひとまず人吉市内の温泉銭湯めぐりは5ヵ所をもって終了。
人吉温泉は各施設の泉質名を見れば想像がつくと思うが、重曹泉系のいわゆる“美肌の湯”であり、つるつるとした肌ざわりが特徴だ。
いずれも独自の源泉で、しかも源泉かけ流し。
これほどの良泉に恵まれ、しかも情趣豊かな佇まいの温泉銭湯がある街は、人吉市が日本随一ではないだろうか。
少なくとも、私の中ではナンバーワンである。
▲人吉温泉「元湯」
和田さんにはさらにわがままをお願いし、えびの市郊外に湧く6湯目の白鳥温泉「下湯」(単純温泉、70.9℃) と7湯目の白鳥温泉「上湯」(単純温泉、50.2℃) を訪ねた。
▲白鳥温泉下湯の露天風呂
▲白鳥温泉上湯の露天風呂
この西郷隆盛が西南戦争前に遊んだ「西郷南洲曽遊之地」を掉尾として、駆け足3日間 (正味2日間)、7湯12施設の湯旅は完了した。
その後、えびの高原で今が盛りのミヤマキリシマを観賞し、鹿児島空港まで送り届けてもらい、帰途についた。
▲えびの高原のミヤマキリシマ
日本百名山登頂のご縁のおかげで、人吉市内の湯めぐりから鹿児島空港までお付き合いいただいた和田さんには、ただただ感謝の一言である。
文・写真/飯出敏夫
◆カテゴリー:活動報告